急な話ですが,研究課題を公募します。

突然ですが,以下の要領において研究課題の公募をいたします。森個人による私的公募です。研究会全体によるものではありませんので,その点銘記してください。

今年度から3年間にわたって,広田照幸日本大学)教授を代表とする共同研究「社会理論・社会構想と教育システム設計との理論的・現実的整合性に関する研究」がスタートします。

そのなかの「戦後の社会構想イデオロギーと社会・教育の変化の検討」という枠での研究課題を公募します。具体的な内容は以下に掲げる「応募呼び掛け文」を参照してください。

応募資格

応募資格は以下の通り。
(1)大学院博士課程在学以上。それ以外に年齢上・所属上の制限はなし。
(2)日本語による研究上のディスカッションに支障のないレベルの日本語能力。
(3)今後3年間で当該テーマにもとづく1回以上の学会報告(口頭発表/ポスター発表,国内/国外を問わず)と1本以上の学術論文(科研費報告書以外の媒体へ投稿)の執筆を行う意思と能力があること。
※ 交通費支給の関係上,国内在住者を想定した公募ですが,研究課題が優れていれば海外在住者の方でもなんとか方策を考えさせていただきます。

採択された場合

応募メールをお送りいただき,私の独断と偏見で選んだのち,折り返し採択通知のメールを差し上げます。その場合,
(1)もしも日程上可能であれば,4月18日(日)14:00〜18:00に日本大学文理学部(世田谷区桜上水;詳細はご本人に対して別途お知らせいたします)で開かれる第一回全体会にご出席ください。不都合の場合はその旨ご連絡ください。
(2)当該研究課題の遂行にあたって研究費から一定の補助が受けられます。
(3)今後3年間にわたり全体会・研究チームごとのグループ会合へご参加いただきディスカッションに加わっていただきます(交通費は研究会で負担いたします)。
(4)4月18日(日)の全体会終了後,あらためて今度は2000字程度の研究概要をメールにて送付してください。

送付メールの内容

応募しようと思われた方は,急なことで申し訳ありませんが,4月16日(金)までに私宛てメール(本ブログのプロフィール欄を参照してください)で以下の内容のものをお送りください。
(1)研究課題名
(2)研究目的の概要(400〜800字)
(3)氏名(ふりがな)
(4)生年月日
(5)所属・略歴
(6)現住所および連絡先メールアドレス
※ 私と面識がない方は一言でいいので自己紹介文を添えてくださると助かります。

採択の通知

採択された方にのみ4月17日(土)にメールにて通知させていただきます。

その他

※1)「応募呼び掛け文」の文面をどのように読み込んで応募するかについては,応募者みなさん独自の「読み込みかた」で結構です。
※2)それぞれが独立の研究課題を遂行しながら,それをネットワーキングしていく種類の研究会だとご理解ください。何か同じ研究テーマを共有し,同じ調査・分析活動を行っていくようなタイプの「共同研究」ではありません。
※3)採択された場合の共同研究内での位置づけはさしあたり「準メンバー」といったところでご理解ください。ただし(繰り返しになりますが),研究会への参加費や研究課題遂行にあたって必要な経費については可能な限り補助させていただきます。その代り,共同研究期間内に,1回以上の学会報告・1本以上の学術論文の発表を義務づけさせていただきますので,実質的に遂行可能な研究課題での応募をお願いいたします。

応募呼び掛け文

90年代半ば以降,日本では《ネオリベラル》な社会構想と結びついた教育改革が広汎な領域において進展した。そのような現実に対して,教育社会学をはじめとするさまざまな学術的立場からの批判・反論が試みられ,実行された教育改革のネガティブな帰結や「意図せざる結果」を指摘・実証することにおいては,一定の成果をあげてきたといってよい。


だが,そうした成果のほとんどが,眼前の改革への批判力はあるものの,では今後の教育システムの設計をどのような現状認識にもとづき,どういう価値を目指して推し進めていくか,という点に関しては,有効な研究も提言もなしえていない。


つまり,教育システムの設計(ここでは,学校制度や選抜・評価制度,カリキュラム,労働市場とのリンクなど,教育にかかわる制度的枠組みの設計を指す)にあたっては,社会の現状についての理論的な基礎(「社会理論」)と社会が目指すべき価値についての理論的な基礎(「規範理論」/「社会構想」)とが必要であるにもかかわらず,《ネオリベラル》な教育改革を批判してきた立場の側に,そのような足場が欠如しているのが現在のわれわれが置かれている現実である。


そのような足場を構築していくための基礎作業として,ここでは,日本の教育システムに固有の歴史的文脈を明らかにする試みを広く公募することとしたい。


社会理論(現代社会論)や社会構想(規範理論)それ自体の内在的な検討を踏まえたとしても,当然のことながら,現実の社会は,理論が描くそれとの間に距離がある。現実の教育システムが抱える諸課題は,特定の社会論や規範理論から一部分示唆を得ることができるにしても,システム全体はそれとは無縁な多様な要素や要素間の関係から成り立っている。とくに,歴史的に固有の文脈が社会のあり方や教育システムの固有の特徴を作っている。


特定の学術ディシプリンにこだわることなく,できるだけ広い観点から,日本の教育システム固有の歴史性を洗い出す作業を進めていきたい。その際,戦後日本で展開された社会理論や社会構想との関係において現実に構築された教育システムの性格を明らかにする,という分析上のスタンスだけは共有していただきたいが,それ以上の具体的な分析対象の措定については,すべて応募者それぞれの学術的な判断にお任せすることとする。


「教育」研究からはもちろんのことだが,できれば「教育」以外の研究領域からの果敢な応募があることも期待してお待ちする。