エアテーマ部会 : 〈戦後教育〉の歴史社会学

某学会でテーマ部会の募集というのをやるのですが、お役目の必要上、テーマ部会とその趣旨文の案を一つ用意しておりました。諸般の事情で実現はなくなったボツ企画ですが、備忘までここに貼り付けます。

もしも「うん、こういう部会あったらいいじゃん」と思われた方は、2015年度の学会大会でやってください、あなたが

繰り返し強調しておきますが、こういう企画は私たちの生きるこの世界には存在しません ので悪しからず。

【部会名】 〈戦後教育〉の歴史社会学

【趣旨】
本部会は、1945年を画期とする政治的契機を重視する観点から、〈それ以後〉の教育事象を歴史社会学的に分析する報告を募る。ここでいう〈戦後教育〉には単なる時期区分以上の負荷がかかっている。それは1950年代から90年代まで社会科学的思考の前提条件ともなってきた冷戦体制(その国内的表現としての55年体制)を自覚的に対象化する視角をともなう問題設定である。

1990年代半ば以降、〈戦後〉を歴史的検討の対象とする研究が、教育社会学とその周辺領域でも相次いだ。新たな資料の発掘や口述生活史の方法論的深化、あるいはデータアーカイヴの整備といった条件が〈戦後〉の歴史化を促した側面はある。だがそれ以上に、冷戦体制の崩壊によるグローバル化の新たな展開と、「新自由主義新保守主義イデオロギーとも連関した諸改革の進展がもたらした現状への問題意識がその底流にはある。「日本的」とも称された従来のシステムが重大な変容を遂げつつある一方で、それを水路づける支配的な改革方針に対抗的な将来構想は明確な像を結んでいない。

戦後史の「問い」をこうした現代的課題に応えうるものへと彫琢するには、従来のシステムの形成過程を、複数の構想のせめぎ合い、葛藤や妥協が帰結した「解」の連鎖として再構成する視座――「教育政治」への着眼が重要になるだろう。政治学系ではすでにSchoppa(1991)や徳久(2008)など、複数の政策アクターに注目した研究がある。日本政府、GHQ、教育系と財務系の行政機関対立、さらに政党、教員組合、教育学界など、教育改革の政策過程や「教育政治」をめぐる力学のみにとどまらず、その背後にあった社会構造の変動や社会意識の変容にまで踏み込むべき歴史社会学的探究の課題は多い。

教育政策立案や教育改革批判に重要な影響を及ぼしたという点では、教育社会学界も戦後の「教育政治」図式を構成する一アクターであって、その例外ではない。したがって本部会の試みは、教育社会学それ自体の再帰性を歴史的・経験的に(再)記述するような問題設定にも通じるだろう。

時期や対象はとくに限定せず、教育史や政治史とも異なる固有の位相で〈戦後教育〉を問い返す問題意識が共有されるような議論の場になることを願っている。

【キーワード】 戦後、教育政治、教育改革