祝・合格

ずいぶんとブログに寄りつかなくなったものだ。

最近は愛知県の知多半島の根っこあたりに足しげく通わせていただいている。私みたいなもんが。ありがたいことである。責任も感じている。

「お前がフィールドワーク?」と昨夜も笑われたが,ほんとに冗談ではなく,むかし箕浦ゼミを履修しておいて(←ただし脱落orz)よかったと思う。

昨夜といえば一日研究会があった日で(←いやおれは午後だけだけど),その前日は予習に追われていた。しかしまあ正直いえば,戦後の教育改革がどうとかそんなんはどうでもよくて,メールが来るか来ないか,それだけが気になった一日であった。

岐阜県の教員採用試験の最終合格者発表の日だったからである。

昨年度まで卒論ゼミでみていた指導生が昨年は正規の教員採用には惜しくも漏れて臨時採用枠で小学校教員をしていたから,ぜひ今年こそ,と願っておったのである。見事合格していた。うれしい。

それ以外にも,現在の4年生も3年前の新入生のときに「基礎セミナー」(という名の初年次教育コマ)の担当をしていた縁もあって気になっていた。前の職場の仲良し3人組(苦笑)だった同僚に尋ねると,覚えのある名前が複数でてきて合格したらしいと聞き,うれしい。

そもそも昨年度のゼミ生に関していえば,指導教員の贔屓目を差し引いたとしても,昨年新卒時での採用で落ちてるのがおかしいのである。

その頃,ゼミが終わって雑談になると,よく学生に「いつごろ教師になりたいと思ったのか」とか「最初っから教師になりたかったのか」と尋ねることがあった。私は自分が研究者=大学教員になろうと決めたのが大学4年の春と遅かったモラトリさんなので,18歳で大学に入学する時点で,なりたい職業が確定している教え子たちというのが不思議で仕方なかったのだ。

だいたいみんな早いw そして,最初から教師,と決めていた学生が多い。そういう場合,両親のいずれかが教師であることが多いが,他の職業選択肢を考える前に入学してこないとならないわけだから,しょうがないと言えばしょうがない(おっちょこちょいと言えばおっちょこちょいである)。最初に目に入った魅力的な職業人が「教師」である可能性は高くて(逆もある),そのインプリティングのまま入学してくる。

だがその学生は違った。――「ワタシ,ほんとは警察官になりたかったんです」

ケイサツカン??

のどかな農村部出身の彼女は中学時代,生徒会の役員かなんかしていたはずだ。高校も進学校だったし。しかしその中学は,のどかな農村部の中学校ではあったが,決して「のどかな中学校」ではなかった。本ブログでも中学校が荒れる要素として何度か触れたが,校区が大きすぎるのだ。生徒の出身背景の多様性も分散が大きくなってしまっている(教育実習で中に立ち入らせてもらったこともあるが,ああいうのってなんでかわからんが,一歩足を踏み入れるだけで“荒れ”のアウラって漂っているものである――ただし,現在はいうほどのレベルでもない)。

そこで生徒会もやっていたその学生は,中学の教師とも信頼関係があって,いろいろと日常的な会話も交わしていて,なかにはすごく信頼していて深い話をする教師もいたそうな(←いいことじゃないか)。

他方で,小学校時代からの親友の多くは,中学に入学してからどんどん「ワルく」なっていく(←そんなにいいことではない)。ワルくなっていっても生徒会の彼女と親友でもあり続けたが,教師連とは「戦争」状態である。彼女はその双方の言い分を聞き,双方に共感しつつ,互いの誤解と対立を解消すべく奔走する。

「ワタシには先生の言うことも友だちの言うことも両方よくわかったのに,全然何をすることもできませんでした。でも友だちはどんどんワルくなって先生との関係も悪くなって,もう推薦してやらないとか,高校にも行かないとか...だから,自分は将来,そうやってワルくなって犯罪とかに走ってしまう子どもたちを親身になって受け止める警察官になろう,って思ったんです。」

んでそれがまたなんで教師に?

「だってぇーーw,よく考えたら,ワルくなる前の子どもをワルくならないようにするほうが頭いいって気づいてぇww,なら警察官じゃなくてせんせーじゃん,つってwww」

フーコーは偉大だ(←違う)。

それはいくつぐらいのときに決心したの?

「うーーーーん......中2ぐらいですかね」

中2!!(はやっ)

念のため申し添えると,↑こんなのはさすがの前の職場においても,いくらなんでもレアケースである。んで実はこの話を聞いてから私はこの学生を尊敬している。中学校の生徒会役員から進学校の高校へ行き,その後私の前任校へ,という軌跡のなかにいろんな含意があるからだ。

岐阜県は「人物本位の採用」とかいうスローガンを強調している教育委員会であるのが,これについては,かつて開催された教育委員会と地元教員養成大学との懇談会でも一言物申したことがあるし(批判の主旨がまるで理解できてらっしゃらないご様子とお見受けしたが),もうちょっと時間をおいて折をみて,再度きっちりご批判申し上げる用意はある。

しかし,それにしても,よかった。本人の努力はもちろんだが,講師として勤務する職場の先生方のご理解とご協力,ご指導も得られてのことだろう。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。

今後ともご指導ご鞭撻のほど,よろしくお願い申し上げます。