(告知その3)天野郁夫『新制大学の誕生――大衆高等教育への道』合評会

ところが、だ。

いや、ところが、ってこともないんですが、3月11日(土)にはこれまたこのブログで継続的に告知してきております「教育の歴史社会学コロキウム」において、天野郁夫『新制大学の誕生――大衆高等教育への道』合評会も開催されてしまうのです。

「されてしまう」ってこともないんですが。

天野郁夫といえば言わずと知れた日本高等教育史/論の泰斗、齢70を超えてから『大学の誕生』(上下巻(上:帝国大学の時代、下:大学への挑戦)、中公新書、2009年)、『高等教育の時代』(上下巻(上:戦間期日本の大学、下:大衆化大学の原像)、中公叢書、2013年)、そして今回の『新制大学の誕生』と、明治初期から戦後に至る日本高等教育史3部作を立て続けに刊行されております。今回の書評対象作はこの3部作完結編。

思えば3部作の口火を切った『大学の誕生』では不肖わたくしの企画・司会により合評会を開催した模様も若干ブログでご紹介したわけですが、そこをご覧いただければお分かりのように、その合評会の時点で「いやじつはぼくもう次の本書いたんだけど(1600枚)」とのたまって場を揺るがせた台詞はつまりその時点で2作目『高等教育の時代』を書き終えていたということを意味しており、この折りの懇親会の席では3部作構想がきっちり語られていたわけであります。

そして今回の合評会が開かれるこの時点においてもまた、中公新書から次著『帝国大学――近代日本のエリート育成装置』の刊行が決定しておられるわけでありまして。それもこの3月にですよ。

どないやっちゅうねん。

そういえば「帝国大学について書いている」ってゆうてたもんなあ。たしかもう一個なんか書く構想を語っておられたような。ただ強いて言うなら次のやつはさすがに上下2巻本ではないようです、よかったですありがとうございました。

ところで上記懇親会の席上での私の記憶によれば、戦後改革時に総理大臣諮問機関として設置された「教育刷新委員会」(1946年8月設置、その後1949年6月には教育刷新審議会に改称)で交わされた議論を読み込むことの重要性をしきりと強調しておられました。その言葉どおり、今回の2巻本は『教育刷新委員会・教育刷新審議会会議録』全13巻の解読をひとつの焦点として、一方にその前段として戦時期に再燃する学制改革論議との連続性を、もう一方に文部省と戦後「新制大学」に結実する各学校史に視点を置いた実際の移行・昇格の過程を視野に入れつつ、「明治10年(1877)の最初の近代大学・東京大学の創設から数えて140年に満たないわが国の大学・高等教育システムの歴史の中で、最も重要な転換点であったといってよい、その新しい大学の制度と組織が、どのような経緯を経て誕生したのか」(1頁)、この新制大学誕生の物語が紡がれていくわけです。

評者には、天野先生と同世代の「教育の歴史社会学」の泰斗・菊池城司先生、高等教育(史)研究からは教え子世代にあたる吉田文先生、そして新進気鋭の戸田理先生と、世代を異にしつつたいへん充実したメンバーが揃いました。交わされる議論の中身にいまから期待が高まります。

例によって、教育の歴史社会学に関心のある方なら、だれでも気軽に参加できます。学部生の方も歓迎です。いつもと開催場所は変わって早稲田大学ですのでお間違えのないよう。なお、これはいつも通り、参加希望の方は前日までに教育の歴史社会学コロキウム事務局の佐々木啓子先生までご連絡を。連絡先をご存じない方は私に問い合わせてください。

教育の歴史社会学コロキウムも、もう3周年だそうですね。早い。

というわけで、ご関心の向きは、ぜひ。

第12回 教育の歴史社会学コロキウム


日時:2017年3月11日(土)13:30〜17:00
場所:早稲田大学16号館7F−710(演習室)


プログラム:天野郁夫『新制大学の誕生』(上下巻、名古屋大学出版会、2016年)合評会


書評報告(各30分)
1.戸村理氏(國學院大學
2.吉田文氏(早稲田大学
3.菊池城司氏(大阪大学名誉教授)


(休憩20分)


リプライ(40分)天野郁夫氏(東京大学名誉教授)
討論(40分)

懇親会(食事会)自由参加 17:30〜



連絡先:教育の歴史社会学コロキウム事務局
    電気通信大学 共通教育部 佐々木研究室

新制大学の誕生【上巻】――大衆高等教育への道

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新制大学の誕生【下巻】―大衆高等教育への道―

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帝国大学―近代日本のエリート育成装置 (中公新書)

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