第11回 教育の歴史社会学コロキウム

※追記(2016-08-27)台風10号の接近に伴う天候悪化の予報のため、30日に予定されていたコロキウムは延期となりました。9月下旬に再度日程調整のうえ実施されるとのことです。

※追記(2016-09-02)コロキウムの振り替えは、10月22日(土)13:30〜17:00となります。内容や場所には変更がありません(司会は変更あり)。9月ではなく10月となりましたので、お間違えのないよう。

※追記(2016-09-13)プログラム中の司会の修正を反映しました。

前回は告知失念で関係者のみなさまにはたいへん失礼いたしました教育の歴史社会学コロキウム、第11回は8月30日(火曜日)開催です忘れないうちに。

ここ数回は研究方法の面での議論を意識した登壇者とテーマの配置になっていることが増えている気がいたしますが、今回はまさにそう。「教育の歴史社会学コロキウム」企画委員のおひとりである井上義和さん(帝京大学)による整理(PDF)のなかの言葉を借りれば、第一報告の牧野さんは「言説・社会史研究」系、加藤さんによる第二報告は「移動・選抜研究」系、ということになりましょうか。

今回のコロキウムについては、その井上さんによるML投稿での紹介が簡にして要を得ています。牧野さんは下記プログラム中の参考文献に挙がっている著書ですでに知られていますが、「今回の報告では、ピーター・ドラッカーの受容を中心に、戦後の経営層の教養の変遷についてお話いただきます。大量の文献調査にもとづく丁寧な実証分析には定評がある氏の研究の舞台裏についても伺えればと思います」のこと。

また、加藤さんには、「神戸一中の学籍簿を利用した共同研究に参加した経験を中心にお話いただきます。1980年代の丹波篠山、90年代の鶴岡、そして00年代の神戸。学籍簿のような個票データの利用は、個人情報保護の意識の高まりや持続的な共同研究の難しさもあいまって今後ますます困難になることが予想されます。氏の貴重な経験を参加者と共有できればと思います」とのこと。

正確を期せば、「丹波篠山」の研究には学籍簿等からの個票データセット(の構築とその分析)はありません。それがあったのは「鶴岡」と「神戸」。しかしながら、そのうち著書のかたちにまとまったのは「丹波篠山」だけ。天野郁夫編『学歴主義の社会史―丹波篠山にみる近代教育と生活世界』(有信堂高文社、1991年)。この点は「個人情報保護の意識の高まりや持続的な共同研究の難しさ」といったことを超えて、論ずべきものがあるだろうと――つまり研究内在的な要因があるだろうと――私は考えます。

丹波篠山で思い出しましたが、じつにもう四半世紀も前のこの研究への違和感と批判意識にひたすら衝き動かされて書かれた著書が、労働研究の第一線で活躍してきた著者による書き下ろしで一昨年にでております。野村正實『学歴主義と労働社会―高度成長と自営業の衰退がもたらしたもの』(ミネルヴァ書房、2014年)。著書紹介という意味ではいささか間の抜けたタイミングになってしましたが(その責めの半ば以上は私が負うべきですが)、下記リンク先にて書評(PDF)が公開されておりますので、ご関心の向きはご笑覧ください。これに即してだらだらと書き添えられることはいくらでもありますが、今日のところは。

この書評を書くうえで「丹波篠山」も(さんざん)読み返し、その周辺にある天野郁夫のあれやこれやの仕事も振り返らされっていたところでの今年3月のこれでしたので、私個人にとっては不思議な、そして有意義なタイミングではありました。

私には(世代的/立場的に)加藤さんのものには出席すべき責務がある気がいたしますが気のせいかもしれません。牧野さんの新しい研究テーマにも興味津々です。とてもとても具体的な、直接話すなかでしか伝わらないような研究方法をめぐる悩み(の克服)やコツといったこと(つまり「舞台裏」や「貴重な経験」)について多く語られる会であると思います。貴重な場です。研究の世界に入ったばかりの(こうした研究テーマや研究手法に関心のある)院生さんには、ぜひ参加されることをお勧めします。

例によって、連絡先はもうひとりの「教育の歴史社会学コロキウム」企画委員である佐々木啓子さんとなっておりますが、佐々木さんの連絡先をご存じない方は、まずは私までご一報ください。喜んでおつなぎいたします。

第11回 教育の歴史社会学コロキウム

                 
1.プログラム 
【発表1】 牧野智和氏(大妻女子大学)「治者の教養の変遷―ピーター・ドラッカー論を事例に」
(参考文献)
自己啓発の時代―「自己」の文化社会学的研究』勁草書房、2012年.
『日常に侵入する自己啓発―生き方・手帳術・片づけ』勁草書房、2015年.


司会:岡本智周(筑波大学井上義和(帝京大学


【発表2】 加藤善子氏(信州大学)「都市における学校利用―神戸一中研究からの示唆」
(参考文献)
「近代日本における都市中学校生徒の社会的出自―旧制兵庫県立第一神戸中学校の学籍データによる分析」『信州大学人文社会科学研究』2011年、pp.175‐189。
https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=15974&item_no=1&page_id=13&block_id=45

司会:堀 健志(上越教育大学)河野誠哉(山梨学院大学


2.日時
2016年8月30日(火)10月22日(土)
 13時30分〜17時00分:研究発表(各90分間、途中、休憩15分間)
 17時00分〜17時15分:茶話会(情報交換会)自由参加
 17時30分〜    :懇親会(食事会)自由参加



3.会場
電気通信大学 東1号館 705会議室


4. 連絡先
教育の歴史社会学コロキウム事務局
電気通信大学 共通教育部 佐々木研究室(東1号館513号室))
E-mail:(略)
*参加される方は前日までに上記にメールまたはFAXでご連絡下さい。
(懇親会への参加についてもご連絡ください(当日でも追加可能)。)


※佐々木研究室の連絡先をご存じない方は、まず本ブログ主の森までご連絡ください。

学歴主義の社会史―丹波篠山にみる近代教育と生活世界

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