第7回 教育の歴史社会学コロキウム

恒例の。

来る8月22日(土)に7回目となる教育の歴史社会学コロキウムが開催されます。今回のテーマは「高等教育の歴史社会学」ということになりましょうか。発表者は大前敦巳(上越教育大学)さんと吉田文(早稲田大学)さんです。

第7回 教育の歴史社会学コロキウム


日時: 2015年8月22日(土)13:30〜17:00
会場: 電気通信大学 東1号館 705会議室(7階)(http://www.uec.ac.jp/about/profile/access/


プログラム:
【発表1】13:30〜15:00(質疑応答を含む)
大前敦巳(上越教育大学)
ブルデューとリンガーにおける文化的再生産の歴史社会学―高等教育の変容とその比較の方法をめぐって」
参考文献:
「P. ブルデューにおける高等教育の文化変動論―市場化に伴う正統的文化の自律性低下に着目して」『日仏社会学会年報』21, pp.45-65, 2012年.
「1960年代における新構想大学創設に向けた「計画」のキャッチアップ」『上越教育大学研究紀要』34, pp.67-78, 2015年.


(休憩15分間)


【発表2】15:15〜16:45(質疑応答を含む)
吉田文(早稲田大学
「戦後日本の一般教育の変遷」
参考文献:『大学と教養教育―戦後日本における模索』岩波書店,2013年


17:00〜17:15 茶話会(情報交換会)自由参加・同会場にて
17:30〜    懇親会(食事会)自由参加・調布駅近くに移動


連絡先: 教育の歴史社会学コロキウム事務局
     電気通信大学 共通教育部 佐々木研究室(東1号館513号室)
            E-mail: (略)
            Tel:(略)
*参加される方は前日までに上記にメールまたはFAXでご連絡下さい。
(参加希望で佐々木研究室の連絡先をご存知ない方は、お名前・ご所属・研究テーマ等の情報とともに、森宛てに問い合わせてください。)

吉田さんのご報告は、2013年に岩波書店から刊行された著書『大学と教養教育―戦後日本における模索』の内容と関連したものとなるようです。戦後日本の大学教育の拡大過程における語「教養教育」と語「一般教育」との抜き差しならない(?)めくるめく関係をめぐるお話にも触れられるのではないかと思われます。

他方、いただいた開催通知にある大前さんの報告概要紹介には「フランスの高等教育の変遷をたどりながらドイツとの比較をなさり、ブルデューとリンガーの文化再生産論を歴史社会学的に捉えるといった意欲的な議論を展開される予定です」とあるのですが、ほほほほんとうにそうだとしたらたいへんに意欲的なご報告になるだろうと期待されます。

ただ、個人的には、参考文献に挙げられた2本目の論文(の延長上の問題)に興味があります。この線に限定しても、吉田さんのご報告との絡みでは、とても重要な議論の展開が可能なのではないかと思います。2010年代に入って今まさに進行中の「大学改革」を捉えるうえでも、たいへん示唆的な論点が提起されうるだろうと考えます。

ネット上で読めますが、当該論文の要旨は下記となります。

本稿は,1960年代の新構想大学創設に向けた政策形成過程に着目し,1957年科学技術者養成拡充計画に端を発する高等教育計画が,文部省と経済企画庁の調査局による情報提供に加え,ユネスコOECDの国際機関,イギリスのロビンズ報告,アメリカのカリフォルニア州高等教育計画などの影響を受けて,欧米の「計画planning」をキャッチアップしながら洗練化していった様相を明らかし,その到達点と課題を考察することを目的とする。


1960年の経済審議会による国民所得倍増計画と,国際的な経済発展に伴う教育計画の高まりを背景に1963年中教審三八答申の審議が進められ,1967年の四六答申諮問後,1970年1月の「高等教育の改革に関する基本構想試案」において長期総合計画の原型が確立され,その後公聴会などの意見聴取による修正を経て1971年の答申に至った。この時期には中教審と並行して,東京教育大学内部でもカリフォルニア大学の「クラスター・カレッジ制度」の影響を受けた新構想大学のプランが立案され,1970年筑波研究学園都市法を経て,1973年筑波大学関連法に結実し開学に至った。しかし,同年の第一次石油ショックを契機に修正を迫られた1976年からの高等教育計画では,私立大学の抑制を政策的に誘導することに計画の重点が置かれ,人材需要に対応する新構想大学の拡充は例外として扱われるにとどまった。

「新構想大学の拡充は例外として扱われるにとどまった」との結論のその先に、われわれの現在があるのではないかと思います。