追悼 春一番

昨夜書いたときはそんなこと考えてもいなかったが、一夜明けて、ちょっとネットを眺めていて、公開のところにもってこようと思いなおした。

冠番組をもつとか、「天下を取る」というようなこととはまったく無縁の芸人だったが、一部の人びとにはたしかに愛された芸人だった。

その人びとはみな、どこかは言葉にできないが、どこかしら、彼の同じところを愛したのではないかと思う。

体を壊してからは、ご家族もたいへんなことが多かったのではないかと思う。

昨夜訃報に接し、追悼文を書いた。

なにかの偶然で、いつかだれかの目にとまるのも悪くないと思った。

あらためて、謹んでご冥福をお祈りします。

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春一番が死んだ。

就職なんてほんとにできんのかねえと2人で言ってた頃の深夜番組でよく観た気がする。

あるときテレ朝土曜深夜の新日で復帰した初代タイガーと猪木のタッグ戦をやっていた。まあ客寄せなんとかの類だ。それをたまたま目にした奥さんがにわかプロレスファンになって、LLPWのファンクラブに入ったり、2人で興行に足を運んだり、リン魂も毎週観てたような頃だ。

そういえば1人で興行に行ったこともあった。

後楽園の遊園地のほうの片隅で、LLPWが毎日ビアガーデンやりつつ試合を2試合だけやるみたいな興行で、たしかそれ用の安い入場券で入れてビール1杯で2試合観れるのでずいぶん通った。まったく研究が進まなかった頃の話だ。

知らない人のほうが多いと思うので言うと、LLPWというのは風間ルミ神取忍の団体で、2001年に死んだノンフィクション作家の井田真木子とも親交があった。井田が死んだのは本当にショックだった。

とゆうか、井田の話もしだすとキリがないので、それは措く。

要するに、先の見えない不安と焦燥に押しつぶされそうだった頃、私はプロレスにはずいぶん世話になったのだ。

私にとって春一番という芸人は、そういう空気と風景のなかで、猪木をやっている。

「元気ですかー!?」と拳をあげている。

「元気があれば、なんでもできる」と言っている。

そんな春一番が死んだ。

もう「元気ですか」と訊いてくれることもないわけだ。

天国ではいくら酒を飲んでも内臓壊さない、てゆうようなルールだとよいのだが。

これからは毎年春一番が吹く頃に、春一番のことを思い出し、「元気ですか」と尋ねよう。

ありがとう。安らかに眠れ。