続・佐々木輝雄論集

しかし萬年先生のブログを拝読するにつけ,なんか私は自分でずいぶんレートを上げてしまったようにも思われるが,それはきっと気のせいである。この内的な感覚を「背筋が寒い」と名づけよう。

いろんな方向で,なんかすごいことになっておる。佐々木輝雄職業教育論集・全3巻,のことである。

第1巻『技術教育の成立――イギリスを中心に』は2編。

第1編「イギリス技術教育制度の歴史的研究」は全2章。うち第2章は「救貧制度と技術教育」。
第2編「ワークハウス・スクール制度の研究――そのイギリス技術教育史上の意義について」は学位請求論文(東北大学・教育学)。序章・第1〜4章・結章の全6章構成。うち第2章は「貧民救済への国家関与とワークハウス制度の萌芽――エリザベス救貧立法とワークハウス・スクール」と第3章は「ワークハウス・スクール制度の確立――18世紀を中心にして」。貧民救済/救貧思想/貧民児童の教化/救貧法/貧民児童教育の思想/貧民教育機関の実態......(と技術教育!)

第2巻『学校の職業教育――中等教育を中心に』も2編。

第1編「職業教育の課題」は全3章。うち第2章は「職業教育と普通教育との相互接近論――教育審議会の中等教育改革論の検討」,うち第1節・第2節は「中等教育「一元化」の審議経過(1)(2)」。昭和戦前期における「中等教育「一元化」」論......(と職業教育!)

第2編「高等学校制度改革の課題――職業教育からの接近」は序章・第1部(第1〜3章)・第2部(第1〜第3章)・結語から構成。うち第2部第1章は「技能連携制度化と職業高等学校」,うち第2節・3節は「教育刷新委員会第13回建議の審議経過と審議内容」「教育刷新委員会第13回建議と職業高等学校」。「教育の機会均等」論......(と職業高等学校!:前エントリ内容参照のこと)

第3巻「職業訓練の課題――成立と意義」は3編。

第1編「戦前期職業訓練の行政と制度」は全4章。うち第1章「職業訓練行政組織の成立」は「社会局」について,第2章「公共職業訓練の成立過程」は「失業労働者救済への国家関与(第1節)」について,第3章「日華事変期における公共職業訓練」,第4章「熟練工論争の背景と過程」は熟練工養成論/熟練工養成制度について。

第2編「戦後職業訓練の実態と改革」は全6章。順に「職業訓練関係官庁行政組織の再発足」「職業訓練所の実態」「労働者教育運動の内的矛盾」「職業訓練の高等教育化・成人教育化」(←前エントリ内容参照)「公共職業訓練の実態と改革」「継続教育としての公共職業訓練」。

第3編「職業訓練の歴史と課題」は講義録。

ところで,いま何年?(2010年。)

この論集でたの何年?(1987年。) 著者が亡くなったのが1985年。

原著でたの何年?(第1巻は1967/68年と1971年(執筆は1970年)。)

著者享年47歳(!)

金子さんほどの批評眼などあるはずもない私だが,その高い評価の根拠たる一端はすでにここまでの叙述からもうかがわれる。現在の私がコミットしている共同研究諸方面の重要アジェンダがすべてすでに先回りして押さえられている,この感じ。私もこのような研究者の研究をきちんとフォローできていなかった「自分の不明を恥じ入るばかり」である。

うすい新書読んで現代日本の「貧困」とか「失業」とか「職業への移行」とか「福祉」とか「教育」とか「BI」とか「アクティベ」とか「レリバンス」とか...(以下省略)...を考察した気になっている人びとは,すべての饒舌をただちにやめて,とりあえず本論集と向き合うべきである。いいからまずは黙って読め。おしゃべりはそれからだ。

ここがフロンティアだ。ここへ跳び込め!(←思想地図vol.2・濱野氏からのパクリ)