拙稿ご紹介

昨日は件の研究会でした。1日頭を使い続けるという機会が少なくなっていたところに寝不足のまま朝から夜の飲み会まで“祝祭”が続きましたので,いささかならず疲れましたが,ま気持ちのよい疲れです。関係者のみなさま,お疲れさまでした。そのとき少しだけ話題にでて,以後,インフォーマルにお問い合わせをいただいたのでご紹介だけしておきます。

拙稿「『総中流』の思想とは何だったのか――『中』意識の原点を探る」東浩紀北田暁大(編)『思想地図』第2号,2008年。

以上,書誌情報の提供まで。

論文冒頭に寄せていただいた「それは正しく『言説分析』と呼ばれるべきである」との編者・北田さんの言葉は,過分といいますか,「あ,そう読まれましたか」といいますか,しかし研究の世界への入り口で「フーコー」や「言説」といったものと出会ってしまった世代としては,そういったものへの一つの「総括」の仕方ではあったと思います。不毛な誤解のないように蛇足を付け加えますと,私は「私は“言説”分析(/研究)をやりたいと思います」といって何かをやろうとする人のことを学者としてはまったく ほとんど信用していませんので,そこは一つよろしくお願いいたします。

なお,「中」意識の問題について(もういい加減やめたほうがいいとは老婆心ながら思いますけれども)ご関心のある向きは,拙稿とあわせて数土直紀さんの所論を参照なさることをお勧めします。

「現実から乖離する社会意識」『思想』第1026号,2009年。
「戦後日本における階層意識のダイナミクス」『理論と方法』第24巻第1号,2009年。
『階層意識のダイナミクス―なぜ,それは現実からずれるのか』勁草書房,2009年。

いずれも拙稿とは対照的な角度(数理モデルの精緻化)から,「『中』意識問題」にアプローチした秀作です。この方向で(対抗的に)拙論を掘り下げていくという選択肢もあるのですが,今のところそういう作業は自分の中での優先順位が低いので放置してある状態です。それよりは,“戦後日本社会史”の展開作業を優先したいな,と。