「野中広務」をめぐり(2)――’99、夏。
野中広務(2003=2005)『老兵は死なず―野中広務全回顧録』文春文庫.
96年橋本内閣発足から引退を決意する2003年自民党総裁選までの回顧録.改めて振り返ると,97〜98年金融危機への対応と,自自公連立政権を成立させたあとの各種重要法案の成立ラッシュが00年代を用意する.
00年代を貫く政治枠組みとなる「自公連立」そのものが野中氏により誕生.その端緒である小渕内閣のもとでは,その後の格差・貧困問題につながる「構造改革」系の法改正と,セキュリティや国家の再構築につながる「秩序不安」系の法改正が矢継ぎ早に成立.自自公連立・小渕内閣のもとでの99年夏の国会が00年代への転換点.
前者は「改正労働者派遣法」「中央省庁等改革関連法」「地方分権一括法」など.後者は「日米防衛協力のための新指針(ガイドライン)関連法」「情報公開法」「国旗国歌法」「改正住民基本台帳法」「改正国会法(憲法調査会の衆参設置)」や,「通信傍受法」などの「組織犯罪対策三法」など.
個々へのコメントは禁欲したいが,「国旗国歌法」については教育現場とのかかわりも深い問題.剛腕で法案成立をもたらしたあとでの「懸念」の表明......その言によれば,
法律[=国旗国歌法:引用者]では義務規定、罰則規定は盛り込まれていないが、実際の教育の現場で、さまざまな形で実質上の罰則、義務に近い運用がなされることのないようにお願いをしたい。(124頁)
...という.
なぜもっとシンプルに言わないのか.こう言えばすむ話だ.
法律では義務規定,罰則規定は盛り込まれていないのだから,実際の教育の現場で,「君が代」を「歌わない自由」もきちんと保障するようにお願いをしたい.
この法律の「柔軟な運用を、教育の現場に求めたい」(124頁)と述べる彼が折にふれて強調する「沖縄」や「在日」や「あの戦争」に対する思いを素直に言葉にすれば↑のようになるしかないと思うのだが...こういう問題に本当に「懸念」をもつなら,否定形ではなく肯定形の言い切りで指示を出さないと現場は“そういうふうに”は動かない.
また,つづく.
- 作者: 野中広務
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