金沢21世紀美術館

毎年一度のプライベート上の必要にかられて金沢の地へ.それだけでは味気ないので,開館5周年記念展を開催中の金沢21世紀美術館へ足を運ぶ.これまでは外を通りすがりに眺めるだけだった当館の内部に入るのは初の体験.この美術館が建っているのは個人的にも思い出深い場所.

「愛についての100の物語」と題された記念展は、さまざまなジャンルの現代アート作品やパフォーマンスを集めたもの.かなりの数にのぼる.全部見てる時間があるか不安だったし,全部見ると1700円って,うわ高くね? と普段こういう場所にあまり足を運ばない人間としては思ってしまい,Zone1の作品のみ鑑賞(全体の半分,お値段1000円なり).

結論としては,あ,全部見たかった,と思うほど楽しめた.これだけ楽しめるなら妥当なお値段です.なかでも印象に残ったのは舟越桂さんの「妻の肖像」というクスノキに材をとった木彫半身像.売店に既刊の作品集もあり,両手に荷物をもってなかったら確実にその作品集は衝動買いされていたと推測されます.展覧会にあった「妻の肖像」は舟越さんの木彫半身像の最初の作品だそうですが,私がとくに好きになったのはむしろその後に展開されていく作品群のほう.静謐さ,繊細さのなかに秘められた〈狂気〉の気配.

妹島和世さん設計の美術館のほうも思っていたよりぜんぜんよかった.総ガラスばりの円形の壁から見渡せる「その場所」――石浦神社,本多の杜,兼六園金沢城の石垣...――の風景は,その地を長く知っている人間にとって意外な「金沢」のレイアウト.かつて建っていた県庁の建物の大半が取り壊されていたこともあって開ける視界の新鮮さがよかった.どこまで計算されていたかは定かでないが.

それにしても土曜日とはいえ8月末まで開催される展覧会なのに(あ,Zone2は7月20日までなのね,納得),ものすごいお客さんの数.老若男女,カップル,学生風大勢の友人連れ,外国人,家族連れなどなど.美大金沢美術工芸大学)がある街とはいえ,この地の底力(いうほどじゃないかもね.買いかぶるな金沢を(自戒))を改めて実感.

しかし,私がこの地と〈和解〉することは,おそらく生涯ないだろうけれども.
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