大学の誕生(上)

本屋で目にとまり,しばし固まる.

天野郁夫先生の新著.この分量で(上)って......

なんというか,天野先生の気魄あふれるお姿が目に浮かび,本屋でわが身を振り返って,ちょっと自分が恥ずかしくなる時間を過ごす.

パラパラとページをめくるだけで学部生時代の「高等教育論」を受けていた頃の記憶が戻ってくる.

木曜か金曜で,午後の眠い時間帯だった.よく寝ていた.が,起きている時間帯に聞いた話は不思議と頭に残っている.今自分がやっているある講義(「教育の社会制度論」っていうなんだか無駄に長い題目)の核になる部分は,結構この講義から得たものの延長上にあったりする.天野先生の主著の一つである『教育と選抜』(第一法規出版,1982年)も,学生時代にはよくわからなかった魅力がODになったぐらいから急にわかるようになったりした.

それから卒論構想発表会(ちょうど今ぐらいの時期だ)でのシーンも懐かしく思い出される.

就職活動中でめっちゃ忙しいなかの男子学生(つまり私の同期だ)が持ってきた思いっきり「やっつけ」の卒論構想レジュメ(A4で1枚,しかも手書き)をゴミでもつまみあげるように持ち上げて放った一言,

「きみ,このレジュメいったいどこで拾ってきたんだ?」

...っていうのが忘れられない.

「どこの坂だ?」

とまで言ったような気がする(どんどん話を作ってる気もする).藤田(英典)先生も苅谷(剛彦)先生も「あ〜あ」って感じで笑ってた(気がする).あの頃は,藤田先生も苅谷先生も,かんしゃく起こした天野先生のあとに学生をフォローする優しい質問&コメントに徹せられてた(気がする).

面白いおっちゃんやなぁ,と声を殺して腹を抱えて笑ったのが昨日のようだ.

ま,今やったらパワハラ(→間違いですね.なんだ,先生に圧力かけられました,と泣かれる?)ですけど.

現在でている中公新書は力作ぞろい.

襟を正して読ませていただきます.