新年度

新しい一年のスタートです.

幸先よく,新しい研究費を獲得できた旨の連絡が入り,向こう3年間の研究資金が保証されて一安心です.

先日,日本大学で行われた研究会でも現在の「新自由主義の時代」をどう捉えるかが重要な問題軸となっていました.報告途中の雑談のなかに出てきた話ですが,大学の固定研究費が6万円,研究旅費も6万円のみに絞られて,あとは競争的資金をとってこい,という某国立大学の現状などは,かなり背筋が寒くなる思いで聞いていました.

その研究会では,一方で「新自由主義の時代」を大きく俯瞰する視点からのセッションと,他方で同じ問題意識を共有しつつも「地べたを這いまわる」系の個別実証研究を積み上げるという気概にあふれたセッションとが並存しており,改めて当研究会のもつ方向性に共感した次第でした(もっとも最後のイスラーム圏(仮)セッションに所用で参加できなかったのは,かえすがえすも無念).前者の「大きく俯瞰」系の報告の1つが「「新自由主義の時代」の分析にはファシズム研究の枠組みが有効だ」と指摘していたのには納得.

その一方で,「大きく俯瞰」にも「地べたの実証」にも十分にはなりきれない,教育学・社会学歴史学の「もどき」の領域で問いを立てようとする自分はどうすればよいのか,という問題は残っちゃいましたね(ひとごと).ともあれ,問いの切れ味を磨いていかなければ(研究として)生き残る余地がないことを痛感したことは言うまでもありません.

そんななかもらえることになった新しい研究費では,1970年代以降の日本における「新自由主義の時代」の展開を,具体的なフィールド調査からアプローチすることを構想しています.『思想地図』なんかで展開したメタ次元でのお話もいいのですが,大学院生以来少しばかり遠のいていた「地べた」系でやっていこうと思っています.

目標は原武史さんの『滝山コミューン1974』.ここでは東京西郊の公団団地の小学校を舞台とした全生研(全国生活指導研究協議会?)の教育実践が俎上にあげられたわけですが,これに続く時代のとある地方の,とある対象をフィールドにしつつ,現代日本社会の教育からみた思想的一断面を浮き彫りにしたいかな,と.
がんばります.

滝山コミューン一九七四

滝山コミューン一九七四

NHKブックス別巻 思想地図 vol.2 特集・ジェネレーション

NHKブックス別巻 思想地図 vol.2 特集・ジェネレーション